生まれたての四季がさわぐ
胸に不可視のまじないを光らせて
夢のほつれを引いたりしないで
手になじむ陽炎
ジェリービーンズ・ムーン
色もつ休符が頬を撫でる
きみが結んだたてがみを揺らして
名前のさかい目が溶けるまで
あら野に掬い取るひこうき
つくりものの悪魔が崩れてしまう
Alice on the rooftop
白いシャツがちょうちょみたい
ためらいに降る雨が止むとき
空室に春が残る
ストロベリー・シー
錯雑の美称
こぼれたシロップにつよがりを浸して
扉だったらしいビスケット
「火花を結んでくれないの?」
にせものの毛並みを脱いでよ
海を降ろした唇が呼ぶ
すべての温度を青く染めて
水底の星図を見ている
BPM:Rippling Wave
晴天へ飛び降りたなら
波のフリルで踊っていてよ
ミルフィーユ層に遠い雨音
デッドエンドでひろがる花圃
円環を逃げてくガラスの靴
いつだってきみひとり分の空白を残して
孔雀柄の影が揺らいで
しらない顔の初恋として
瞼ひとつ分の幸いを逃しているきみへ
春のような背骨をのぼる
百獣に歌う子守り歌
体温で溶けるくらいのとげ
ワンダーランド専用リボン
宝石質のマリーゴールド
お砂糖で組み立てた正論を齧る
破線のロマンティック
瓶詰めの葡萄と日なた
自家製のひだまり
胸の余白いっぱいの詰草
光を背負って砕けない強度
大人とはマシュマロの化身
まばたきのたび綿あめになる雷雲
雲のおなかが花の柄
小指で夜を曖昧にして
サンドイッチに挟むため息(いちごジャム風味)
頭上にふさわしい色の石
ふたり雨雲を隠して歩く
静脈を駆ける星をあげたい
部屋の外には世界が閉じ込められていて
ねじまきのポラリス
雨降りの陽をゆずり合う
シグナルの甘い味
透明なチョコレート毒
視覚に注がれる花の蜜
鍵穴のキャンディーが溶けくずれて
どんな台風も眠らせるひつじ
キッチンを満たしている祝福
半径1mの永遠
ホットケーキミックスに沈む変光星
薬指に花の轍
パールひとつぶ大の海
この歯車はメレンゲ製
スカートに写し取るパレード
願いごとの数だけ爪を塗る
吸った空気ごと胸に抱くから
どんな呪詛も祝福に変えて
きんいろを中和するお砂糖
きみの翳りで埋まるくらいの欠け
シャンプーで薄まる魔物
底に沈むチェリーのような濁り
スポンジケーキに慈愛を挟む
本を捲る音に似ている声
手首を廻る羽掃き星
カシオペヤ座をくぐる部屋
二重星の浸透圧
my little invisible
エメラルドでもいばらでも
「おかえり」を毎日あたらしくして
フライデー・バケーション
浴槽の檻から掬ってくれる
バルコニーに収まるくらいの地球
きみが明日を連れてくる音
くるぶしを渡る日付変更線
呼吸で点滅する紅茶色の闇
天使を覆うレースを剥がして
手のひらに朝、胸には夜船
枕元のちいさな木陰
「運命の人」と三回唱えて
流れない星を乗せてまわるよ
木漏れ日は花を描くように染み付いて
同じ午前0時の上で二人
僕らの今日を結び続ける
ふりつもる夜を一枚分けて
指十本で数え切れない幸福に
心ふたつで分け合えるくらいの未来を
It's a honey sunny day