この透明は光のほかには穢されない ねつまぼろしの種苗 お前のために集束される幸福を ダイヤモンドの細胞核 雛生る樹幹 胸に嵐の喩え 磁石みたいに彩度を奪う 失えばいい注ぐのだから 正しさだけで発光できる 腐らなかった宝石の翌冬 |
金の輪っかを攫うのさ 百獣のブルー 可視光の精油 写真や風化や神さまを結ぶ 引く道すべてに金色が散る 花芽も雛も引き連れて 恐れず統べろ 四季よりもあたらしいひと 鍵束に正解はたったひとつ よい毛並みのヴィラン |
春の呼び水 バタークリームが塩辛い 衛星が潜ってく 青と金の卵殻 両の手はいつもひらいておくこと 拭われては朝が来る この震えをきみだけは知ってて たてがみはリボンのために差し出されるの お前が不可視だと言う果て こんなうつくしい不自由 |
きみではないわたしなどはない 日々も四季も折り畳んで その英知を孵さないでね ゆるやかに水は降る 蝶々結びの専門家 横顔が夜の明けるのに似ていた 化けの皮の所有上限 潰えてもすきな星 4文字で事足りるすべて 多面多色体の主 |
誇らしい枷 春をゆく氷河 首すじに光源を見る どんな真冬もくるんでくれる 輪郭線に雨粒を 悲しみが降るものならば傘になろう 消耗されない名を付けて 暗やみを吸い上げて染まる カシミアよりラグドールより キャンディーラッパーコンフェッティ |
桜が散ったら絶えればいい 背中にキツツキの幽霊 傷によく効くケーキシロップ 爪の先まで真水が通う 魔性の堅物 拾い集めた輝くものを残らず頭上に降らせるから 地中に蕾む マイナス等星の思し召し 雲も火も結び尽くして 砂金と全円 |
飛行船の出自 執着のもつ美しい別称 百年の猛毒 星座でさえ匂いがあるのに 従順な角の化け物 お前が呼べば私の名すら恋になる 牙に花柄を描いてあげる 誰にも束ねられないで 手のひらは魚、回遊する熱 どうしてそんなに愛ばかり触れる? |
神さまは猛獣と教えられた わたしがきみを好きになる夢を見て どこにも孤独が見つからない いつか魚として会えるよ 君を満たすゼロになりたかった 口笛の暗号で言って きみよりかわいい欠損はない どんな幸福も君に見せるため拾い歩いた ぴかぴかのスパンコール勲章 駄菓子屋で買える宝石 |
陽溜まる窓辺 うちの賢いライオンちゃん ふくらんだ祝福も置き去りの幸福も シュガー・オランジェ・サンフラワー stray-orca syndrome 信号ごとスプーンで掬う 触れた皮膚が星になる 底なしの海にも光を渡しにやってくるから 吸収されたくて触れ求めるのだ あさってを白いお皿に取り分けて |
回転体の双軸 この球体を七色にできる、というと笑う 粉々にしてもいいの 夜の終わりや奇跡のための 液状の太陽が継がれてゆく 宇宙ごとしあわせにするさ 不可能すら結うから愛だと言って 手のひらで回文が羽を生やす 呼吸ひとつも解き明かされてく ぼくら日々を喜びと名付けた |